社会保険労務士が教える就業規則の基礎知識 業務命令権編

shikun

東京都千代田区のBSP社会保険労務士法人が3回にわたって教える就業規則の基礎知識も、今回が最終回となります。労働条件、服務規律とみてきましたが、もう一つ企業に重要なのが業務命令権です。どこまで業務命令が可能なのか、それを規定するのも実は就業規則なのです。早速見てまいりましょう。

個別労働契約の限界

「業務命令権っていっても、普通に雇用契約を結べば、いろいろと命令できるんじゃないの?」なんて質問が聞こえてきそうです。
そうです、雇用契約を結ぶことにより、企業は賃金を支払う義務、従業員は労務を提供する義務が発生いたします。
例えば、「9時から仕事を始め、上司の命令に従い勤務し、12時から1時間休憩を取って、その後18時まで、次はこの作業をしてください。」という命令は、雇用契約の定めに従って可能です。

それでは、「今日から1年間、遠方の関連会社に出向してください」と命令した場合、従業員に応じる義務はあるでしょうか?
通常、雇用契約書に出向命令権まで記載されていることはありません。この場合、従業員が拒むことに対して、争いの余地が生じることになります。

就業規則に定める業務命令権

ここで重要となるのが就業規則です。就業規則の中に、業務命令権として規定し、それを入社時に従業員に周知していれば、出向命令も可能となります。
(その権利が、不当な目的などの場合は権利の濫用として否認されます)
出向を例に出しましたが、残業命令や、休日出勤命令なども、しかりです。
休職・復職の命令権も、期間や条件、復職後の処置など具体的に細かく定めておかなければ、トラブルのもととなります。

そして、何よりも重要なのが懲戒権です。
前回、服務規律に関して説明いたしました。このようなことは会社として禁止しますと規定しても、その実行確保措置がなければ守ってくれない従業員もいるでしょう。
そのため、軽度の服務規律違反の場合は始末書の提出、さらにひどい場合は出勤停止、横領や暴行など悪質な場合は懲戒解雇と、あらかじめ懲戒権を就業規則に規定しなければならないのです。
法治国家はいわゆる罪刑法定主義が厳格に適用されます。
ある行為に対してこの刑罰が適用されるとあらかじめ規定していなければ、刑罰を与えることはできません。

まとめ

人事権(出張、海外出張、配置転換、転勤、出向、海外出向、転籍や降格など)や時間外・休日労働命令、休職・復職命令、懲戒権などを網羅的に個別労働契約に記載することは困難です。そのため、就業規則によって網羅的に規定し、統一的に運用することで平等性を担保します。

スタートアップ企業の社長さんの中には、就業規則を作成することを嫌がるかたもいらっしゃいます。もめたときに不利になるという誤解が存在します。しかし、就業規則作成は社長の専権事項であって、作り方次第では大きな武器となります。

東京都千代田区のBSP社会保険保険労務士法人は、各業種それぞれが抱えるリスクに応じた就業規則を日々作成しています。
しっかりとしたルールを明示することが、企業の方向性を伝え、従業員もどのように働けば評価されるのかという指針を得て、働きやすい職場への第一歩となります。