労働契約法って何?労働基準法との違いはどこにあるの?

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労働契約法ってご存じですか?労働3法といえば、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法と習いませんでしたでしょうか?いま、より重要性を増しているのが労働契約法です。東京都千代田区のBSP社会保険労務士法人、岸本が解説いたします。

私人間の契約の在り方を規律する労働契約法

以前、労働基準法には、行政取締法としての性格、刑法的性格、私法的性格が備わっていると解説いたしました。特に、労働基準法は行政取締法としての性格が強く、企業が、労働者を非人道的に扱うことを、罰則をもって禁止しています。
労働契約法は、まさに私法そのものです。民法の、労使版と言えばわかりやすいでしょうか。
企業と労働者が労働契約を締結する際のルール、企業が人事権を行使する際のルールが規定されています。

就業規則の規範的効力

そもそも、就業規則が、なぜ労働者全体の労働条件を規定するのか、法律の定めはありませんでした。ただ日本全国で慣習として行われており、その事実たる慣習としての性格から、就業規則には、事業場の労働者全体の労働条件を規律するものだという最高裁判例が積み重なっていました。2008年、労働契約法の成立により、ようやく法定されたのです。

「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」(労働契約法第7条)。
合理的なものでなければならないため、公序に反するものは認められません。

就業規則の不利益変更

経営難などによって、労働条件を引き下げなければならない場合もございます。本来は、労働条件は労使対等の立場で決定するもののため(労働契約法第3条)、労働者不利益に変更する場合は、個別の同意を得なければなりません(労働契約法第8条、第9条)。

ただし、大企業ともなれば、全員の個別同意を得るというのもなかなか難しいものです。そこで、労働契約法第10条には、「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」とされています。
ここにいう合理性は、第7条にいう就業規則自体の合理性を踏まえたうえで、変更の合理性が求められます。

権利濫用法理の明確化

そのほか、民法が定める権利濫用法理を、労働法に落とし込んでいるところも重要です。
労働契約法第3条には、「・・・労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。」と規定され、第14条から第16条において、それぞれ、出向、懲戒、解雇の権利を濫用してはならない旨が規定されています。

まとめ

労働契約法は、労働基準法のように罰則があるわけではありません。あくまで、労使間のルールが定められており、労使のトラブルが発生した際にはこの法律を基準に裁判がなされます。
ただし、実務上は、行政の取り締まりよりも、労働契約の債務不履行に基づく労働者側からの訴えの提起の方が、企業にとって大きなダメージを与えかねません。その意味では、今後ますます重要となっていく法律です。

東京都千代田区にございますBSP社会保険労務士法人は、特定社会保険労務士としての労使トラブルの解決のあっせん支援も行っております。労働契約法をどこまで知っているか、今後の労使関係を考えるうえで肝となります。