就業規則の休業手当。民法と労働基準法どちらを採用?

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前回、就業規則の流れで休業手当のお話をいたしました。賃金60%の方が企業側の支払いが安くてすみますが、従業員の立場を考えると100%支払ってあげたいところです。民法536条2項と労働基準法26条とどちらを採用しますか?東京都千代田区のBSP社会保険労務士法人がご説明いたします。

休業手当率の適切な設定は

前回お話ししたように、賃金の60%は絶対支払わなければなりません。労働基準法第26条で定められた公法上の義務です。言い換えれば国からの規制です。
逆に言えば、60%以上であれば70%であれ80%、90%、100%どのように設定してもかまいません。
従業員の生活がかかっているため、「休業協定」として、企業と従業員代表の間で書面にて取り決めるのが一般的です。

今回のコロナ禍においても、休業手当率60%の企業から100%の企業まで様々でした。
従業員の、今後のモチベーションや愛社精神を考えれば、苦しい時こそ痛みを分かち合い、少しでも高い休業手当率で休業手当を支払いところです。
コロナ禍においては、雇用調整助成金の要件緩和で、助成金の1日当たりの上限が高く設定されたため、休業手当率100%で休業手当を支給しても、ほぼ満額が助成される結果となりました。

平均賃金で支払うことも可能

さて、労働基準法第26条に関して、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と規定されています。太文字の部分、平均賃金はご存じですか?

実は、休業手当の支払い額はもっと下げることも可能なのです。
平均賃金とは、労働基準法で決められた概念です。原則的には、過去3か月の月給を総暦日数で割ることによって、1日当たりの平均賃金を算出します。
感のいい方であればお気づきかもしれません。
月給3か月分を労働日数(例えば21日+20日+20日)で割ったものが通常の賃金の1日単価ですが、平均賃金は暦日数(例えば31日+30日+30日)で割るため、より小さな額となってしまいます。

まとめ

平均賃金を用いていい場合については、労働基準法に規定されています。解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇、労災補償などに限定されています。
企業秩序違反者を排除する場合の解雇予告手当などは、平均賃金を用いることで額を少なくすることもありでしょう。
逆に、会社都合で休業させた際の休業手当や、パートさんが有給を取った際の有給手当を平均賃金で支払うのはちょっとかわいそうですね。
大した金額の差でもないにもかかわらず、従業員のモチベーションを大きく落としてしまうかもしれません。

休業手当率をいかに設定するかは、その企業の内情によって、各社決めていかなければなりません。
東京都千代田区のBSP社会保険労務士法人は、いわゆる学究ではなく実践の場で休業手当のご相談にのっています。
就業規則をどのように定めるか、今回は「休業手当」「平均賃金」というミクロな視点から見てまいりました。