労務相談1:労働条件の変更はどんな時に起こりうる?

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今回は、労働条件の変更がどんな時に起こりうるか考えてみましょう。東京都千代田区のBSP社会保険労務士法人には、労働条件変更に関する相談が多く寄せられます。類型化して解説してまいります。

労働条件の変更の主な例

労働条件変更の大きな理由として主に3つほど考えられます。
まずはあなたさま企業が下記の3つに当てはまるかどうかをご確認くださいませ。
今は必要なくても覚えていた方が将来的に役に立ちます。

会社が一定規模になったとき

スタートアップ時は、多くの場合、気心の知れた方の採用から始めます。2人、3人と雇っていくうちは、ある程度社長の裁量で、この人なら給与はこれくらいだろう、と労働条件を決定していきます。この段階では、それで全く問題ございません。逆に、規程や制度を導入すると、ベンチャーならではの機動性・柔軟性が失われてしまいます。

就業規則が必要とされる、「常時10名以上雇用」する段階で、労働条件を統一的に整備する必要が生じます。各人の職務内容や業務量がそれぞれ異なり、会社に対する貢献を正当に評価しなければなりません。

就業規則をはじめとする諸規則、評価制度や賃金制度などを導入する際には、人によっては、以前に決めた労働条件を引き下げなければならないことがあります。その際は、個別の労働契約のまき直しによる不利益変更となるでしょう。

経営ひっ迫

コロナ禍において、経営ひっ迫のため、全従業員の賃金を下げなければならないという相談も多くいただきました。零細企業であれば、個別労働契約による賃金の引き下げも可能です。その場合でも、本来、従業員が本人の自由意志で、賃金引き下げに応じるということは考えにくいため、しっかりと会社の状況を説明し、代替措置も用意して、本人の自由意志によるものであることを証明できるよう書面に残すことが重要です。
企業規模が大きい場合は、個別労働契約では対応しきれません。その場合は就業規則若しくは労働協約の変更に基づく労働条件の不利益変更を進めることとなります。

会社再編

企業再編時にも、労働条件の変更の必要性が生じます。A社とB社が合併した場合、A社とB社では就業規則も労働慣行も異なります。どちらかに合わせていかなければなりません。それが、労働者に有利な変更であれば問題ございませんが、不利益変更の場合は慎重に行わなければなりません。この際にも、上記就業規則若しくは労働協約による不利益変更の手続きが必要となります。

労働協約とは、会社と、その事業場の過半数の労働者を組織する労働組合との間の書面による協定です。こちらは、労働者の意見が集約されているため、成立すれば労働協約により労働条件が規定されます。
就業規則による労働条件の不利益変更が一番難しいと言われています。就業規則は、会社側が一方的に定められるからです。

そのため、
① 従業員が受ける不利益の程度がどれくらいか
② 変更することが本当に必要であるのか
③ 変更後の就業規則の内容が実態に合うものかどうか
④ 従業員代表者や労働組合との交渉の経緯
を総合的に勘案して合理的なものでなければ無効と判断される可能性がございます。

まとめ

以上、労働条件の変更に関して類型化してまとめてみました。一口に労働条件といっても、賃金や労働時間と福利厚生などでは重要性が異なります。
一定程度の時間をかけて慎重に行うことが何より重要です。専門家である社会保険労務士の関与は必須といっても過言ではないでしょう。
東京都千代田区のBSP社会保険労務士法人は、日々、労働条件変更の実務に携わっています。労働条件変更の予定がある場合は、どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。